欧米人が、アジア人は普通に近親相姦だと思っていると知ったのは、映画『チャイナタウン』だった。
主人公のジャック・ニコルソンが私立探偵で、依頼された殺人事件を解決していく。最後はフェイ・ダナウエイと実父のジョン・ヒューストンができていて、それが原因でフェイの夫が殺されたというもので、彼らは中国人なのだ。
また、シドニー・ポラックが東映京都で作った『ザ・ヤクザ』も、そう悪くない映画だが、最後は不愉快になった。ロバート・ミッチャムが日本に来て、古い友人高倉健と交友を展開し、出入りのシーンもある。だが、ミッチャムの愛人で、高倉健の妹だったとされていた岸恵子が実は、高倉の妻だったことが分かる。この脚本を書いたポール・シュレイダーは、長く京都にいてヤクザ映画の大ファンだったそうだが、彼も「アジアでは近親相姦は普通にあること」と思っていたのだろうか。
もっとも、戦後の日本では、戦争で夫を失った未亡人が、その家の兄弟と再婚するというのがよくあったので、戦争という特異な時期とはいえ、ありえたのだろうと思う。
だがら、小津安二郎の名作『東京物語』では、戦争で死んだ次男の嫁の原節子は、普通に考えれば三男の大坂志郎の妻となっていたはずだった。
小津が、そうしなかった理由は二つある。一つは、小津が大坂志郎が嫌いだったこと。もう一つは、小津自身が、戦争未亡人の村上茂子を愛人にしていて、未亡人をキレイごとに描くのが嫌だったのだろうと思う。
さて、古代の天皇を見ると近親相姦は、普通に行われていた。天武天皇は、4人の姪と結婚しているのに象徴されるように、伯父・姪婚が行われている。
さらに次の平安時代では、桓武天皇は、20人もの女性と関係していたというのだから、一夫多妻である。
丈夫な男を得るには仕方がなかったのだろうが。
そうなると、側室を否定しつつ、男系男子に皇位継承者を求めるのは無理があり、矛盾している気がする。
さらに、欧州でもハクスブルグ家は、近親婚を繰り返していたそうで、偉い人は、近親婚禁止の例外なのだろうか。