日本映画専門チャンネルの大島渚特集。
大島は、ずっと見ていたが、1971年頃は、すでに大島にも興味をなくしていたので、見ていなかった。
南島に向かう河原崎健三と賀来敦子が、旧家のことを回想する。
満州から引き上げてきた桜田満州男の河原崎は、一家の長で右翼的なボス佐藤慶以下の一族と会う。
戸浦六宏、小松方正、小山明子、殿山泰司らの大島一家が一族を形成する。
佐藤は強欲な男で、淫乱で、妻の乙羽信子の他に多数の女がいる。
この辺の雰囲気は、まるで横溝正史原作、市川崑監督の金田一耕介シリーズのようである。
そのとおり、小山明子は、自殺か否かは、不明だが、日本刀に刺し殺されて死ぬ。
大島渚、創造社の作品は、議論映画だが、同時にブラック・ユーモアでもあり、河原崎の母親の葬式の時、大島一家の役者が、春歌、ワイ歌を歌いだすところは大笑いした。
また、河原崎が見合い結婚の式の当日に、相手の花嫁が盲腸を理由にいなくなって姉妹、花嫁不在の披露宴をやるところも、大笑いだった。
そこに、警官になった一族の若者が、「こんなばかげた式をなぜ壊さないのですか」と言って暴れるところは、三島由紀夫事件を想起される。
三角ベース野球等々、戦後史の総括だったそうだが、そこに終わっていて、結論がないのは、当然だろうか。
武満の音楽が素晴らしいが、その弦の響きは、満州男が、大地に耳を付けて聞く音だろうか。
賀来敦子が美しいが、この映画の撮影監督だった成島東一郎監督の名作『青幻記』と同様、南島に行くのは興味深い。
成島は、この映画の撮影を担当して、『青幻記』のヒロインに賀来を起用したのだろうか。
『青幻記』は、私のとって一番泣ける映画なのだが。