来週、27日に行うトークイベントのために『洲崎パラダイス』を見る。たぶん、3回目だと思う。
これは、三橋達也と新珠三千代の二人が、洲崎の遊郭の近くに来て、いろいろあるが、最後は、冒頭と同じ勝鬨橋から今度は、反対側の銀座の方に行くバスに乗って去ってゆく話。
この映画の多くの舞台になるのは、洲崎橋のたもとにある「千草」という、轟夕起子が一人でやっている店で、ここで新珠は働き、三橋はソバ屋の出前持ちになる。
千草に来る客に河津清三郎がいて、現金を持っている彼と新珠はできてしまう。
それを知った三橋は激怒し、「神田のラジオ屋」とのことで、河津と新珠を探しに秋葉原を徘徊する。
1956年なので、景気は停滞気味だったが、すでにテレビ放送は始まっていて、電気店の街頭には野球中継らしい放送に人だかりができている。
ただ、テレビは非常に高価で、売れ筋はラジオのようで、テレビキットなどの広告も見える。
自分でテレビを組み立てるのだが、1960年代には結構あったものである。
そして、遊郭の女と駆け落ちして逃げた元亭主の伝七が、轟のところに戻ってくる。
子ども二人と、轟は、亭主とある日浅草に映画を見に行く。
駆け落ちした女に殺されてしまうのだが、これが植村謙二郎なのだ。
黒澤明の映画『静かなる決闘』で、三船敏郎に梅毒を感染させるギャングの男で、最後は梅毒で発狂してしまう異常に怖い感じの俳優で、日活では主に悪役だった。
あらためて見てみると結構二枚目である。
テレビや遊郭のこと、さらに洲崎の先にやたらに疾走していく埋立工事だろうダンプカーといい、川島雄三は、時代と風俗の表現が巧みである。
それは、松竹蒲田の島津保次郎の「映画は風俗をきちんと描け!」という教えからきたものだと思う。