伊藤大輔監督の、日本映画史に残る1927年、昭和2年のサイレント末期の名作。
『信州血笑編』と『御用編』、どちらも失われたと思われていたが、2003年に広島で個人宅で発見されたもの。
主演は、大河内伝次郎で、他にも古い役者が出ているが、分かるのは、『御用編』の最後に出てくる妾の伏見直江のみ。
キネマ旬報のベスト・テンでは、『信州血笑編』が1位、『御用編』は4位、伊藤大輔は、もう1本『下郎の首』で9位になっているのだから、すごい。
話は、故郷を追われ、諸所を逃げる忠治と子分の逃亡の旅。
大河内の凄絶なチャンバラと演技がすごい。
伊藤大輔と言えば、移動撮影であり、細かいカットが作るリズムである。
追われる国定忠治一家の凄絶さ、挫折感や絶望感、明らかに反体制的なものであり、当時は「傾向映画」と呼ばれ、左翼的雰囲気を醸し出していた。
傾向映画と言うのも、死語だが。
だが、正直に言って、サイレントの名作を見ても、多分本当の魅力の70%くらいしか味わっていないはずだ。
なぜなら、今回は完全なサイレントで、活弁も伴奏もないからだ。
やはり、サイレント映画は、活動弁士の説明と三曲合奏のような伴奏が付かないと、感動がないものである。
場内は、鼾の波となる。
2003年に発見されたときは、活弁付きで上映されたそうだが、サイレント映画は、そうした上映方式に是非してもらいたいと思う。
フィルム・センター