1953年に大映が初めて作ったカラー映画、当時の言い方でいえば総天然色映画、脚本・監督は衣笠貞之助、主演は長谷川一夫、京マチ子。
BSで録画したが、同時に教育で神奈川芸術劇場の『浮標』も録画していたために、冒頭の数分間が抜けていた。
平清盛が厳島神社に詣でていた隙に起こした源義朝らの反乱で、平家方が都から逃げるところから始まった。
そのなかで、上西門院の女房・袈裟の京マチ子を救い出した盛遠の長谷川一夫は、その美しさに心を奪われる。
反乱を鎮圧した後の論功行賞で、長谷川は清盛から「何でも望みのものを取らせるぞ」と言われると
「袈裟と自分の仲人になってくれ」と答える。
すぐに側近が、すでに山形勲の妻だと言われるが、長谷川は諦めない。
袈裟のところに行き居留守を使われると、叔母の毛利菊子を利用して袈裟を呼び出し、口説く。
「夫の山形を殺しても」と長谷川言われ、京は密かに決意をする。
深夜、長谷川が山形の寝間に忍び込み、一刀で切るとそれは京だった。
長谷川は、身の愚かさを恥じて出家し、再び地獄門の前をすぎ都を離れる。
この長谷川の強引さは、今日で見ればただのストーカーであり、女性蔑視でもある。
ただ原作の菊池寛は、自分の秘書を愛人にして平気だったのだから、当時では長谷川がきちんと口説くのは、むしろフェミニスト的と見られたのかもしれないが。
大映最初のカラー映画と言うことで、セット、衣装には大変力が入っていて、デジタル・リマスター版で見ると、「本来の日本の色とはこういうものか」とあらためて思う。
特に衣装の絹糸の光沢が素晴らしい。
カンヌやアカデミーでの異常な高評価は、この辺にあったのだろう。
音楽は、芥川也寸志で、これも重厚な響き。
長谷川の他、石黒達也、清水将夫、香川良介、植村謙二郎らが脇役を固めていて嬉しい。
はげ頭の平清盛が迫力があり誰かと思うと、千田是也だった。
千田は、溝口健二の『新・平家物語』でも、大矢市次郎・市川雷蔵をいじめる悪役の公達である。
悪役は、芝居が上手くないとできないという典型。
この『地獄門』は、言うまでもなく黒澤明の『羅生門』が海外で評価されたので、永田雅一が「門が付く映画が良い」と作られたもので、この後にも皇女和宮を主人公に『朱雀門』も作られたが、これは全く評価されなかった。
NHKBS