『泥だらけの青春』

1954年に日活が制作再開したとき、俳優の菅井一郎が監督した作品。
当時、有名俳優が監督をすることがよくあり、山村聡は、独立プロで『蟹工船』を撮った後、日活で『黒い潮』を作っている。その他、佐分利信や田中絹代らも映画を監督している。

菅井は、サイレント時代からのベテラン俳優で、溝口健二や小津安二郎作品にも頻繁にでいる名脇役である。
この『泥だらけの青春』は、田舎の劇場で三国連太郎、乙羽信子、山内明らがオペラ『カルメン』を演じているところから始まる。
劇団は解散し、三国と山内は映画のエキストラに、乙羽は父親大町文夫がやっているラーメン屋を手伝うことになる。
ある日、新作映画のオーディションが行われ、三国が運よく主役になる。
そこから急速に三国はスターになるが、次第に周囲とも軋轢を生むようにもなる。
最後、現場でトラブルを起こして三国は新日本映画社をクビになり、移籍しようとした東洋映画も、共演者の高杉早苗が一緒ならの条件を出し、勿論高杉は動かないので、破談になる。
山内は乙羽と結婚し、その席に現れた三国は、またやるぞと町を彷徨う。

新日本映画とは、勿論日活のことで、当時の撮影所がそのまま見られるのは貴重だが。
だが、脚本が新藤謙人で、非常に図式的で、見ていて白ける。
この後、菅井はもう1本映画『フランキーの宇宙人』を監督して、再び俳優に戻る。
大映の『黒の試走車』等では、主役のような働きを見せた。
阿佐ヶ谷ラピュタ

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