『風雲千両船』

こんな映画があるとは知らなかったが、横浜市中央図書館にあったので、見てみる。

1952年、東宝で大谷友右衛門主演、長谷川一夫、山口淑子の共演で稲垣浩が監督したもの。

長谷川一夫と山口淑子、李香蘭と言えば、戦時中の『支那の夜』『白蘭の歌』『熱河の誓い』の大陸三部作で有名で、それを狙ったもののように見えるが、主演は大谷友右衛門で、相手役も山口淑子になる。

話は、幕末の長崎で、農民から武士になり、砲士になったが、江戸を追われた大谷友右衛門は、花火師として全国を歩き、長崎にやって来る。

そこでは、イギリスの最新式の軍艦をめぐり、幕府と長州、薩摩の入手争いが繰り広げられている。

代理人の中国人商人が志村喬で、その愛人が山口淑子、この山口が大谷と恋仲になり、いかにして恋を成就させ、軍艦を薩長が手に入れるかが、筋書きである。

長谷川一夫は、高杉晋作で、その他坂本龍馬など、維新の志士が多数出てくる。

音楽は、現代音楽の深井史郎で、盲目の娘・木匠マユリで、中国にいたこともあるとのことで、月琴状の楽器を弾かせ、沖縄の歌と踊りも入れるなど、長崎の異国情緒をうまく出している。

月琴に代表される中国の「明清樂」は、江戸末期から明治時代には人気のあった庶民音楽であるが、日清戦争で日本が勝ったことで、急激に人気がなくなり、日本の都市の街頭から消えた音楽である。

大谷友右衛門は、言うまでもなく今年亡くなられた人間国宝の中村雀右衛門で、1950年に稲垣浩監督の時代劇『佐々木小次郎』で映画デビューして成功したが、その後はヒット作がなく、歌舞伎界に戻って大名題の役者になった。

横浜市中央図書館AVコーナー

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