言うまでもなく、黒澤明の代表作であり、アクション映画として世界映画史上最高との評価もある。
いまさら何を言うのか、と思われるだろうが、先週多分10回目くらいを見て、新しい発見をした。
この映画も、やはり太平洋戦争に参加しなかった黒澤明の補償行為であり、後編の野武士と村の百姓たちとの戦いは、彼にとっての戦場の再現だった。
これが優れいているのは、前半と後半がはっきりと分かれていることで、前半の志村喬以下の浪人徴集の件は、あざといほどの作りのドラマで進行する。
だが、後半の戦闘の場面になると、まるで記録映画のような作風で画面は構成されていく。
百姓と馬上の野武士たちの戦いという、予期せざる振りつけられないアクション場面の連続であるため、記録映画のように撮影するしかなかったためだ。
本当に戦場で、戦闘を実際に見ているような迫力がある。
問題は、なぜこのような方法を黒澤明が取ったのか、であるが、やはり彼は従軍できなかった太平洋戦争を再現し、自分も参画したかったからだろう。
だからこそ、単あるアクション映画を越えたリアリティを得られたのである。
よくこの作品の登場人物の侍のだれになりたいか、という質問があり、その答えによって人の性格がわかるというのがある。
アメリカ人は、志村喬の島田勘兵衛を、イタリア人は三船敏郎の菊千代を、フランス人は宮口精二の久蔵が好きだというたぐいである。
では、黒澤明は誰になりたかったのだろうか。
言うまでもなく、冷静沈着で、すべてを分かっている人間で指導者の志村喬の島田勘兵衛であるに違いない。
この作品の主な出演者の内、まだご存命なのは、昨年に津島恵子、さらに千石規子が亡くなったので、土屋嘉男と島崎雪子だけだろう。
村人の一人の本間文子については、この作品にも出られた加藤武雄さんに昔お聞きしたところでは、よく分からないとのことだった。
『黒澤明の十字架 戦争と円谷特撮と徴兵忌避』 現代企画室
コメント
Unknown
島崎雪子さんは、まだお若い頃ですから随分以前に亡くなられていますね。ですから、存命者は、ノンクレジットでエキストラ出演されている仲代達矢、宇津井健、加藤武、それから子役として参加された二木てるみさんぐらいではないでしょうか。勿論土屋嘉男さん以外ですが。
本当ですか
島崎雪子が死んだと言うのは本当でしょうか。
初めて聞きました。
消息不明ですからよく分からいと言えばわかりませんが。
まだ、81ですからどこかで生きて入れるのでは。
映画わいわい
コメントをいただき、貴ブログを訪問しました。
黒澤のことは、たくさん語りたいと思っています。
「黒澤明の脚本術」(古山敏幸著)は、古山さんに、メールして、私のシナリオを読んで貰いました。
「ジャンピエール・メルヴィル」も読みました。