この映画を映画館で見るのは、多分10年ぶりくらいだろう。
最初は、1970年9月に蒲田ひかり座で、降旗康男監督の『捨て身のならず者』、野村芳太郎監督の『危機百発』との3本立てで見ている。
その後、1990年代に浅草のどこかで見て、増村保造作品の面白さを確認してビデオを買ったので、後は家で何度も見ている。
だが、やはり映画館で見ると音も大きいので演技の迫力が違う。
ヤクザの勝新太郎、その情婦というべき太地喜和子、それに勝新の妹の大谷直子の芝居合戦、特に勝と太地の演技のぶつかり合いがすごい。
勝新太郎は、相手が力量があると対抗して燃えるたちなので、ここでの対決はそうざらにはないものになっている。
勝と大谷は、父親が違う兄・妹で、母親は、衣料会社の社長加藤嘉の妾になっていた。
その母が死に、大谷が6歳の時から、親代わりになってヤクザとして生き、妹の大谷を育ててきたのだが、それはほとんど近親相姦に近い異常さがある。
太地は言う、
「いくらあかねちゃんを可愛がって、結婚同様にしても、区役所の戸籍係は認めないよ!」
大谷は、勝から離れて自立するため、高校の若い教師川津祐介を誘惑して処女を捨てる。
こんなに色っぽい女子高生がいるだろうかと思うが、それは良い。
そこに加藤嘉が、養子にしたという田村正和を連れてくる。加藤と正妻の荒木道子との間には子供がいなかったのである。
大谷は田村も誘惑し、夜遅く帰ってきて勝を絶望させる。
自暴自棄となった勝は、太地のバーで暴れ、警察に捕まり未決に入る。
勝には前から関西系暴力団東風会のボスを殺せとの命令が組長の内田朝雄から出ていた。
勝は、それができず怖くなってサツに逃げ込んだと舎弟の青山良彦が嘘を吹き込んだので、勝は卑怯者ではないと保釈されて出る。
東風会の連中がいるトルコ風呂に行き、ボスを射殺するが、勝も平泉征らに撃たれて死ぬ。
林光の音楽が抒情的でよく、増村保造の強引な演出、独特の台詞廻しが面白い。
嫌味な上流夫人の荒木道子が最高だった。
シネマヴェーラ渋谷