小田原市の生活保護担当が不適切な文言のジャンパーを着ていて問題となっている。
だが、反対に生活保護についてよく言われるのが、所謂「不正受給」であろう。
虚偽の申請で多額の保護費を受給し、高級車を乗り回しているというのが、あたかも真実のように語られる。
だが、本当だろうか。
私は、横浜市のある区にいたとき、2年間保護費の支出の担当課長を務めたことがある。
その時は、平塚市で生活保護担当の職員が保護受給者とのトラブルで刺殺された事件があったが、私も不正受給の男が窓口で暴れたので、取り鎮めに行った際に、腕を噛まれたことがある。
こうした生活保護についてのトラブルには国に見舞金制度があり、私も厚生省の担当部長名の見舞金をいただいたものだ。
さて、私が担当していた時、不正受給案件があった。
それは、ある生活保護担当係長が調べて摘発した案件だった。
どのようにして調べたかは忘れたが、ある高齢の女性が二重に受給していたというのだ。
その方は、夫が元軍人で、軍人恩給を受給していたのだが、それを隠し「高齢で生活ができない」とのことで、保護を申請し、数年間受給していたのである。
指摘して保護費の返還を命令すると、200万円をそっくり返してきた。すなわち、受給した保護費を全部銀行に預金してあったというのだ。
その区で、生保世帯は1,000件くらいだったから、その時の不正受給は1,000分の1となる。
まあ、その程度のものだろうと私は思う。
生活保護は、世界的にも大変に優れた制度で、日本では地震等の大規模災害が起きたときでも、略奪等が起きることは極めて少ない。
欧米では、大規模災害が起きると多くは、組織的略奪が起きることがある。
その差の大きな理由の一つは、この生活保護制度の存在ではないかと思う。これによって最低限の生活が保障されているからである。