今年最初の映画を『武士の一分』にするか、迷ったが市川崑なら楽しいので、犬神にする。2回目の上映だったので、さすがにガラガラで、笑いが起きないのが多少気が抜ける。
1976年の前作と同じシナリオだそうだが、やはりテンポ、リズムが悪いように見えるのは、役者たちが年取った性なのか。
言うまでもなく、横溝正史の金田一耕助ものは、昭和20年代に東映でほとんど映画化されている。金田一は、片岡千恵蔵で、助手白木静子が喜多川千鶴。
私は、『三本指の男』と『獄門島・総集編』しか見ていないが、当時チャンバラを禁止されていた片岡の大ヒット作であり、モノクロの映像なので、戦後の風俗といい、不思議なリアリティと怖さがある。
犬神家も昭和29年に渡辺邦男監督で映画化されている。
松子婦人は、小夜福子、野々宮珠世は、千原しのぶだそうだ。
当時、こうした探偵映画は、原作と筋を変えたそうなので、是非見てみたいと思っている。
今回の犬神について言うなら、主人公松子の富司純子がさすがで、野々宮の松島菜々子もきれいで良い。市川は、女優をきれいに撮ることでは現在最高だろう。
前作の松子は高峰三枝子で、息子あおい輝彦への異常な愛情が印象付けられていたが、今回は普通の母親でも陥る陥穽ということで、こちらの方が説得力があった。
前作で、弁護士は小沢栄太郎だったが、今回は中村敦夫で、俳優座の後輩である。
それにしても思うのは、この30年間の日本の豊かさである。
犬神家の一族は皆飽食で、遺産相続争いで死ぬことはないが、メタボリック症候群では必ずや死ぬであろう。
ムービル
コメント
華やかに、舞い、散る、桜さながらの技量の極み
お正月に見たくなるのはまさに日本文化の香気と美術が馥郁と画面の隅々まで染み通っているからである。そのボワッとした日本の家屋の捉え方を見よ! 同じ谷崎の鐔椴藥随州の、これは映画化でもあるだろう。