1935年、PCLとエノケンの劇団ピエール・ボイスで作られた時代劇ミュージカル。主演はもちろん榎本健一で、近藤勇と坂本竜馬の二役を演じる。
幕末の京都での近藤と坂本の活躍を描くが、題名通りに近藤勇の方に力が入っている。
中村是公や柳田貞一、そして二村定一など、劇団ピエール・ボイスの俳優たちで、劇場でやっていたものとほとんど同じなのだと思われる。
勤王・佐幕の維新劇を喜劇的ミュージカルで軽く描こうというのが監督の山本嘉次郎の視点である。その意味では、彼の弟子と称される黒澤明とは全く異なるものの見方で、一方的に真面目な黒澤に、喜劇で「ものを斜に見る」方法論はない。
それは、都会の裕福な家に育ったお坊ちゃんの山本と、地方出の軍人の家庭に育ち、さらに父親の仕事の失敗で貧困も味わった黒澤明との本質的な差である。
エノケンが、その背の低さから、高下駄を履くと異常な力を持つなどギャグが豊富であるが、これも舞台からのものだろう。
ラストは、有名なレベルの『ボレロ』に乗っての池田屋への襲撃だが、むしろチャンバラのバックの『南京豆売り』の方が面白いと思えた。『ピーナッツ・ベンダー』は、エノケンが当時に「まめ屋・・・」とレコードで歌っていてヒットとなった曲である。
山岡鉄舟は丸山定夫で、さすがに渋い演技。
長瀬記念ホール OZU