今月のフィルム・センターは8月なので、例年通り追悼月間。
今日は、元民芸で一般的には映画「男はつらいよ」のおいちゃんで知られた下条正巳。下条アトムの父である。
メインの『男はつらいよ・寅次郎物語』の前に、1950年東宝教育映画制作の『林檎園ものがたり』が上映される。
脚本西尾善助、監督藤原杉雄、主演下條正巳、沼崎勲とまるで共産党ばかりである。
だが、東宝争議の後、こういう共産党系の連中が、傍系とは言え東宝で映画を作っていたのは大変興味深い。多分、一般上映ではなく、農村での巡回上映の際に本編の添物として上映されたのだろう。
話は、長野県のりんご農家。
下条は息子で、りんご作りを科学的、効率的にしようとし、昔ながらの袋掛け作業は止め農薬散布で労働を軽減しようとし、父親と対立する。
そこで、赤星病が起きそうになる。
赤星病と言って、阪神の一番赤星の走塁に恐怖するものではなく、りんごの木の葉に病害虫が付き最後にはりんごが生らなくなるもの。
実際は、ある樹木群に寄生していた病害虫が、風で吹かれて林檎に付き、病気を起こす。
下条ら村の若者は、農業試験場の技師らの協力を得て樹木の伐採を提起するが、村の神主や地主らは、「ご神木だ」、「先祖代々の木だ」、と切ることに反対するが、最後は伐採し、無事林檎は実る。
この作品は、明らかに久保栄の名作『火山灰地』から影響を受けている。
久保には『林檎園日記』という戯曲もある。
科学的という下条らが今日的に見れば、農薬多用の反環境的農業であるが、この頃は進歩的とされたのだ。
さて、秋吉久美子。
久しぶりに見て、やはり美人だし、カンが良く、芝居も上手い。
東宝で『兄いもうと』を撮ったとき、監督の今井正は「高峰秀子の再来だ!」と彼女を絶賛したが、確かに1970年代の秋吉久美子はすごい。
なぜ、1980年代以降駄目になってしまったのか、信じがたいことである。
ここでは、山田洋次は、秋吉を車で田舎の化粧品店の店頭で販売をするセールスレディという彼女にふさわしい役を与え、渥美清との関わりも上手くできているが、関係はあまり進展しない。
その辺は、同じ流れ者歌手の浅丘ルリ子が、寅次郎の終生の恋人となったのと大きな差である。
秋吉久美子の停滞は、日本映画界にとってきわめて大きな損失だったと思う。
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秋吉久美子
秋吉久美子秋吉 久美子(あきよし くみこ、1954年7月29日 – )は、日本の映画俳優|女優。本名、小野寺 久美子(おのでら くみこ)。人物・略歴静岡県富士宮市出身。Beside所属。父親の業務上の理由で、福島県いわき市で育ち、福島県立磐城女子高等学校…