『帰国・ダモイ』

1950年、前年に『異国の丘』を作った渡辺邦男の監修で作られたシベリア抑留者を題材としたオムニバス映画で、監督は佐藤武。
舞鶴にソ連からの引揚者が帰って来る。
それを毎日、埠頭に出迎えている花井蘭子。
今日も、彼女の夫は戻って来なかった。

田舎の駅に堀雄二が帰還して来る。
そこに今日も出迎えの老人、井上正夫が来ている。彼は、自慢の一人息子が戦死して以来、気が狂い毎日息子を求めて駅に来ているのである。
そして、堀雄二を息子と思い込み、自宅に連れてきて風呂に入れてもてなす。
翌日、堀は礼の手紙を残して村を去る。

上野駅で、靴磨きをしている少年がいる。彼に靴を磨いてもらった復員兵の大日向伝が、少年にタバコのピースを買ってきてくれと言う。
少年は、町中を探すがピースは売り切れ、ところが靴磨きの場所に戻ると隣のおばさんが持っていた。
それを持って少年は駅のホームに走り、出発した列車に追いつき、大日向に渡し、彼も救われた気持ちになる。

銀座のキャバレーで歌っている山口淑子、彼女にはまだ帰って来ない恋人の池部良がいた。
そこに彼そっくりの男(池部の二役)が現れる。
親しく会話をして踊ってフロアーから出口に向かうと池部は、刑事に逮捕される。刑事事件の犯人だったのだ。
彼を連行した刑事と男が扉の中に消えると、本物の池部良が復員兵姿で出てくる。
ここのトリックは、鮮やかだった。
と池部は、山口を「堕落した人間だ」と強く批難する。
シベリアでの洗脳で、完全に共産化していたのである。

また、舞鶴の岸壁に戻ると花井蘭子のもとにやっと夫が帰還してくる。
だが、病を得ていて、あっけなく死んでしまう。

ここで作者たちが描き、憂いているのは、第3話目に象徴される「共産主義的に洗脳された人間」の蔓延だった。
だが、それはまさしく杞憂に過ぎなかった。
共産主義への同化は、収容所で生きていくための借りの姿で、日本に戻ると皆天皇主義者になってしまったのだから。
作品の作られた画面は大したことはないが、実写の当時の日本の姿、その貧困と混乱の実像はすごい迫力である。
列車内で帰還兵にインタビューする記者役とナレーションで、NHKの名アナウンサー和田信賢が特別出演していた。
フィルム・センター 新東宝特集

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