『燃える大陸』

1968年、日活作品で、主演は渡哲也と松原智恵子、そこに岡田真澄や赤座美代子らが絡む。

監督の西村昭五郎は、助監督では多くの監督についたようだが、監督デビューは今村昌平脚本の『競輪上人行状記』で、傑作だったが、2年間干された。

二作目の『帰ってきた狼』もかなりシリアスな作品だったが、一方石原裕次郎のムードアクション映画『波止場の鷹』や青春映画『青春の海』を撮るなど多彩な監督だった。

それが生かされたのは、ロマンポルノ時代になってからで、「団地妻シリーズ」をはじめ、多くのジャンルの映画を作っており、ロマンポルノ史上最多作の監督であるのは有名だろう。

今は、引退して関西の有料老人ホームで暮らしているらしい。

ここでは、オーストラリアを舞台にしているが、勿論カンタス航空の協力である。

売れっ子のイラストレーターの渡哲也が、銀座の松坂屋から宣伝キャンペーンのデザインを依頼され、「荒野」をテーマにしてオーストラリアに行く。

この時期、日活には海外ロケ映画があり、ブラジルに行く『赤道を駆ける男』や、バリ島にロケした『スパイダーズのバリ島珍道中』などがあった。

当時は、まだ海外旅行が珍しかったので、映画の題材になったのは、今では信じられないことだろうが。

もてもて男の渡がカンタス航空のスチュアーデスで、直ぐできてしまうのが赤座美代子。

この人はいつ見ても色っぽく、藤田敏八が惚れて一度は結婚したのも、無理はない。

渡は、荒野のイメージを求めてオーストラリアの砂漠を車で走り、鉱石採取場で、東京のサイケデリッククラブで一目惚れした松原智恵子と再会する。

だが、松原には、オーストラリア人の恋人岡田真澄がいて、ここも三角関係になる。

現地駐在員の近藤洋介は、渡のイラストをアメリカの流行のパクリと疑い、軽蔑していて、彼が唯一の悪役なので、ドラマは薄い。

オーストラリア娘久万里由香と人青年ケンサンダースの恋と殺傷ざた等もあるのは、日活らしい。

最後、砂漠の中で、渡哲也は、今までの自分のイラストは偽物で、やっと本物を得たと言う。

松原智恵子は、こういう三角関係ものの常で、交通事故で急死してしまう。

サイケデリックやボディー・ペインティングなど、1960年代末の先端的風俗が取り入れられているのは、さすが日活である。

だが、全体としては海外ロケで皆舞い上がってしまったのか、散漫なできというべきだろう。

チャンネルNECO

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