非暴力・反戦映画だった 『座頭市物語』

フィルムセンターの三隅研次特集、座頭市の第一作『座頭市物語』を見るのは20年ぶりくらいで、横浜のシネマ・ジャック&ベティで見て以来である。

子母澤寛の原作は非常に短いもので、半ページほどの「座頭市と呼ばれる男がいた」という程度のものである。

それを一つの映画にしたのは、脚本家犬塚稔の力であり、この方はサイレント時代から膨大な脚本を書かれ、103歳まで生きた方である。

市は、利根川のヤクザの親分飯岡助五郎(柳永二郎)のところに草鞋をぬぐことになる。飯岡は、同じヤクザの笹川繁蔵と対立していて、そこには元武士の剣客平手造酒(天知茂)が寄食している。

天保水滸伝の世界を借りているのは、さすがにベテラン脚本家の犬塚稔である。

この作品が良いのは、勝新太郎の市と天知の平手の立場を超えた友情を描いていることであり、さらに市を慕う居酒屋女の万里昌代も美しい。

さらに、飯岡の子分に南道郎がいて、この男の喜劇役者ぶりも笑える。

全体に夜のシーンが多く、画面はかなり暗くて分かりにくいが、コントラストの強いシャープな映像はさすがである。

                    

最後、平手が喀血したとの報を知ると、飯岡はこのがチャンスと利根川を船で渡って笹川に殴り込みを掛ける。

笹川側は、狭い家が密集している場所に飯岡側を引きこみ、両者入り乱れての戦いになる。

市は、当初乱戦を傍観していたが、平手が命を掛けて戦う決意を知ると二人だけで戦い、市の仕込み杖が平手の体を斬って平手は橋の上で死ぬ。

「お前さんの力で勝ったぜ!」と喜ぶ飯岡に市は、

「この死体はなんだ!」と飯岡の称賛を跳ね返し、こも被りを斬って壊す。

寺に仕込み杖を納めて、市は去ってゆく。

ここには三隅研次の非暴力、反戦の強い思いが込められていると思える。

三隅は、大映にいたときに1942年に徴兵されて満州に行き、敗戦後シベリアに送られて3年後、やっと帰国することができた。

その間に戦場で亡くなった多くの友への想いがここには現れていると思う。

フィルムセンター

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