1965年に公開された近江俊郎監督の喜劇、脚本は松井稔、スタッフは旧新東宝系が多い。
旧新東宝系で近江俊郎なら彼が社長の富士映画だが、なぜか音映株式会社になっている。理由は、主演の三沢あけみ、勝三四郎らがビクターなので、ビクターからも金を出させて作ったのだろうと思う。近江俊郎・大蔵貢兄弟は、金に非常にシビアなのである
主人公は、山長製薬の社長・山田長兵衛の由利徹で、社の最大の売れ筋の風邪薬で死んだ者が出たとのとのことで同薬は販売停止になり、由利はショックで倒れてしまい、娘の三沢あけみが社長代行になる。実は、それは八田利製薬社長の南利明の策謀で、彼と由利は実は戦友でもあったのだ。
三沢は、友人の女性と大井競馬で友人の父親の競馬の予想屋佐山俊二の予想の通りに馬券を買うが、もちろん外れる。
三沢あけみが抗議すると佐山は言う。「予想が当たるなら俺が買うよ」
動物の言葉が分かる博士の杉狂児が居て、彼の手助けで馬の言葉を解して大当たりになり、その祝勝の飲み屋で、由利と会うが、由利と佐山は戦友で、元は佐山の方が上官だった。
そして、戦時中に東南アジアに行き、山田長政の子孫の由利徹は、ご先祖様から強壮剤を教えられていて、それを由利と佐山は取に行き、それをもとに強壮剤を開発し、大ヒットする。
006とは。6種類の薬草を混ぜて作るからだが、それと同時にゼロゼロシックスが、セックスと聞こえるからだろう。事実、由利はセックスと発音している。
このように筋を描いていて嫌になるが、どうしてこの程度のレベルの作品が作られたのだろうか。
それは、1960年代中頃の日本のメジャーの映画会社の制作本数の削減が理由である。
1960年代の日本映画の衰退の中で、映画会社がとった対策は二つあり、一つは映画館の入場料の値上げで、もう一つは製作本数の削減だった。本数を減らせば、人件費も製作費も削減できるからである。
これを、メジャーの系列館は旧作の再上映でしのいだが、独立館では上映作品の不足に悩むようになった。
そこに入り込んだのが、「ピンク映画」で、これは新東宝の倒産や、記録映画やニュース映画の中止で失職したスタッフが作り始めた事情もあったが、映画館サイドの理由もあったのである。
一応、日活系で公開されたようだが、たぶん地方や二番、三番館での上映だったと思う。
今見るとほとんど1950年代の舞台の喜劇のレベルで、とうてい笑えない喜劇である。
衛星劇場