『アルゴス坂の白い家』

新国立劇場の新芸術監督鵜山仁演出のギリシャ悲劇3部作の第一作で、作が川村毅。
川村の芝居は、劇団第三エロチカ時代にひどいものをさんざ見たので、今回も全く期待しないで行ったが、意外にも良い出来で驚く。これだから芝居は分からない。

開幕は、いきなりエレクトラの小島聖とオレステスの山中宗のロック調の歌唱で、姉弟が母のクリタイメストラを殺す悲劇の筋が語られる。音楽久米大作。
悲劇を書こうとして、上手く書けない作家島岡の中村彰男が、新宿でエウリピデスの小林勝也に出会う。勿論、あり得ない話。

そこで、ギリシャ悲劇、アトレウス家の物語、トロイ戦争、復讐等が現在との比較の中で解説される。ここは小林の名演技で大変面白かった。
そして、戦争が始まり、中村は新宿で事故死してしまう。だが、戦争はどことの戦争かは不明。
そこに、島岡の母で女優クリタイメストラの佐久間良子が喪服姿で来て、1幕は終わる。
「栗鯛メス虎なんて言いにくいわね」の佐久間の台詞には、笑った。

第二幕は、女優クリュタイメストラの佐久間と映画監督アガメムノン磯部勉との家の話。そこはアルゴス坂の白い家。
アガメムノンは、戦意高揚映画で大ヒットを一時は取ったが、それも今は消え失意の日々をおくっている。
エレクトラの小島聖は作家で、母を憎んでいるが、オレステスの山中宗は、家出してたまま。
磯部は中国人女優カッサンドラの李丹を愛人にしており、クリュタイメストラもシナリオ・ライターのアイギュストス石田圭祐を恋人にしているなど、ギリシャ悲劇が上手く日本の家庭劇に置き換えられている。
この辺の感じは、森本薫の戯曲『華々しい一族』を思わせる。

そして、最後ギリシャ悲劇のように佐久間によって磯部は殺され、父親の殺害をを憎んで山中と小島は母の佐久間を殺さなければならないのだが、誰も他人を殺せず、悲劇は成就しない。そこが喜劇的である。
戦争がない日本では、本当の悲劇はない、という皮肉であるのか。

小島が完全な男言葉で、山中は戦場から戻ってくると女性に性転換しているなど、川村らしく乱暴だが、挑発的で面白い設定だった。
小島聖が宝塚スターみたいで、カッコ良かった。

鵜山仁は、今後どのような芝居を見せてくれるのか、大いに期待したい。
できはともかく今回のような挑発的で、冒険的な企画を望みたい。
今は、楽しくてで分かりやすい芝居しか日本にはないのだから。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 小島聖 より:

    小島聖さんの詳しい情報

    私も小島聖については詳しく知りたいと思っていました。
    今のあなたが小島聖自体、何だか分からないのは決して恥ずかしいことではありませんが、
    早く知りたいでしょう。
    小島聖さんが出演している番組、映画、CMなどの情報を集めてみました。
    意外とあるなと思う人、…