『青春ジャズ娘』は、大学のコンクールに優勝したジャズ・バンドの話。
メンバーはリーダーがトランペットの片山明彦、ドラムのフランキー堺、ベースが高島忠夫で、ピアノはなんと天知茂、他の二本のサックスは誰れか分からなかった。バンドの女性シンガーが新倉美子。彼女は新国劇の辰巳柳太郎の娘で、かなり有名なジャズ・シンガーだった。
メンバーは、全員でそのままプロになろうとするが、フランキーは家庭の事情で先に悪徳マネージャー三島雅夫から前途金を貰ってしまい一人でプロになるが、ひどい扱いで苦労する。
三島雅夫というと悪人で、この人はバリバリの共産党員だったらしいが、時代劇の悪徳商人や庄屋、現代劇では小悪党と、庶民や善人をいじめる悪人で、それがまた実に上手い。私は大好きである。
フランキーの後、天知もストリップ小屋のピアノ弾きになるが、最後は全員が戻りジャズの第一線級との「ジャズ祭」に出て、江利ちえみも競演してくれ大成功に終わる。
面白いのは、「ジャズ祭」に与田輝夫とシックス・レモンズ,先日アメリカで亡くなったナンシー梅木らの他、カントリーのチャック・ワゴン・ボーイズらも出ていることで、当時ジャズとは西洋のポピュラー音楽全体のことを言ったのである。
その他、見砂直明と東京キューバン・ボーイズ、ジョージ川口とビッグ・フォー、タンゴの原孝一郎六重奏団、シャンソンの高英男など、当時のポピュラーバンドや歌手が様々な場面で総出演。
さらに、古川ロッパ、柳家金語郎、伴淳三郎、大泉晃、清川虹子、トニー谷など喜劇人も出て、伴淳とトニー谷が珍芸を披露するのが楽しい。
また、冒頭のジャズコンクールの司会が、後に悪古参兵で有名になる南道郎(と国友昭二)の漫才で、これはとても珍しく私も初めて見た。
見て改めて感じるのは、テレビ以前の芸人の芸のレベルの高さ、面白さである。
日本のテレビは芸人から芸を奪ったことは間違いない。
今のテレビのお笑いは、芸無し芸人のオンパレードであり、まるで見る気がしない。