『火山灰地』

民芸の『火山灰地』を見てきた。全く期待せずに行ったが、意外に面白かった。

主人公、農業試験場長雨宮の梅野泰靖が意外に良かった。言うまでもなく滝沢修の役だが、梅野は良心的ではあるが、特に金も力もない、家庭の問題に悩まされている普通の親父として演じていた。そこは、恐らく理想的インテリとして演じた滝沢とはかなり違っているだろう。

一方の農民たちは、すでに70年以上も昔の話なので、「水戸黄門」と同様の時代劇となる。
雨宮が心血を注いで、その改良に取り組んだ火山灰地の農民は、戦後自作農となり、貧困から脱出して富裕層となって、久保栄らの希望とは逆に、自民党・保守政権を長く支えることになるのは、実に皮肉である。
絶対的貧困層だった農民が戦後富裕になり、そのなれの果てが、あの鈴木宗男なのかもしれない。

樫山文枝が梅野の妻を演じるが(前は細川ちか子)、大げさな芝居でよくなかった。

久保栄の台詞は詩的で素晴らしいが、ブレヒト的なところもある。
しかし、観客は完全に老人クラブ連合会で、かつて新派や新劇が「旧劇」と揶揄していた歌舞伎の方が若い観客が多いのは時代の変化だが、実に恐ろしい。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 緑の文学館 より:

    演劇「火山灰地」第2部(民藝)

    劇団民藝の「火山灰地」第二部を1月の第一部上演に引き続き、東京芸術劇場(池袋)で観た。
    今回も、約三時間にわたる大作を劇団員総勢で演じ切った。
    前半の、開拓地で苦労し小競り合いを繰り返す農民たちの姿を演じる場面は、休憩時間に僕の後ろの席の観客が評していたよ