日本映画には、看護婦が主人公の作品が多くある。
一番有名なのは、言うまでもなく川口松太郎原作の『愛染かつら』で、戦前の田中絹代のもので、前・後篇から続編、完結篇と4部作られたが、今見られるのは、再編集された総集編のみで、それも極めて画質の悪いものしかない。
どうやら、再編集のときに元のネガを捨ててしまったらしい。
日本の映画会社は大抵こうした状態で、自分のフィルムをいい加減に扱っている。こんな連中に「著作権保護」を云々する資格がないのは言うまでもない。
『愛染かつら』は、戦後も、大映で水戸光子と京マチ子主演で二回、松竹でも岡田まり子主演で1回作られている。
他にも、戦前水戸光子と高峰三枝子主演で作られた吉村公三郎監督の『暖流』は、戦後は大映で増村保造監督、野添ひとみ、左幸子の主演で作られている。
また、若尾文子・増村では、相当に過激な戦場での従軍看護婦を描く『赤い天使』もあった。
新東宝では、満州でロシア軍に従軍看護婦が陵辱される際物、石井輝男監督の『戦場のなでしこ』もあり、また至極真面目なものでは、池内淳子主演で、かなり左翼的な作品の『私たちは天使じゃない』もあった。
かの吉永小百合も、映画『いつでも夢を』の中で、正規のものではないが義父で医者の信欽三を助ける看護婦役をやっている。
また、真面目派では神山征二郎の『看護婦のオヤジ頑張る』というつまらないのもあった。
だが、1970年代になると多数作られたのが、日活ロマンポルノの「看護婦ポルノ」である。三井マリアや原悦子らがやったと思う。
看護婦は、女性としては地位のある職業で、古くからあった性か、長い歴史があり、その数はかなり多い。