『まぼろしの邪馬台国』

早稲田に『人類館』を見に行くまでの間、時間があったので渋谷東映で『まぼろしの邪馬台国』を見る。
全く期待していなかったが、意外に面白かった。
渋谷東映は東口駅前で、前は地下に渋谷松竹があったビルの7階。

NHKラジオの福岡放送局で、当時誰も知らなかった邪馬台国について、竹中直人の宮崎康平島原鉄道社長が語り、聞き手だった地元放送劇団員の吉永小百合が島原に来て、観光バス事業に無理やり参加させられる。
観光バスは意外にも当たるが、台風で鉄道が寸断され、壊滅的な打撃を受ける。
鉄道と言っても、蒸気機関車による単線の地方鉄道にすぎない。
その際、崩れた路肩から土器が出土し、宮崎は本格的に古代史研究と遺跡発掘に没頭する。
彼はもともと早稲田大学で古代史を専攻した人間で、古代史等膨大な書籍を所有していたのだ。だが、社業を疎かにしたとのことで、社長を解任されてしまう。
失意の中で、宮崎は幼い子供のため吉永に求婚し、二人は一緒になる。
ここまでの、竹中の常軌を逸した言動はとても面白い。
脚本が小劇場出身の大石静なので、展開やドラマの作り方はアングラ的である。
また、役者も竹中を始め、竹中に敵対する会社役員の石橋蓮司、不破万作、前妻の余喜美子など、小劇場の連中が多数出ている。
また、古代史学会で宮崎と対立する教授に、早稲田の大槻教授、線路の復旧工事の労務者に大仁田厚など多彩なキャスト。

だが、吉永、竹中の二人が邪馬台国を探して北九州を歩く段になると途端につまらなくなる。
理由は簡単で、そこには二人の「愛情物語」しかなく、ドラマがないからだ。

邪馬台国に関しては、九州説、大和説があり、宮崎氏は当然九州説で、松本清張らも九州説である。
私は全くの素人なので、詳細は分からないが大和説の方が正しいのではないか、と思っている。
理由は、『魏志倭人伝』が載っている『後漢書』は、言うまでもなく中国の歴史書である。
本質的に事大主義の中国が、日本の最高権力として、九州の一地方政権に過ぎなかっただろう「九州の豪族」(九州説論者の邪馬台国)を、日本の代表政権とは認めなかっただろうと思うからだ。

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