早稲田大学大隈講堂で行われた沖縄の芝居『人類館』を見た。
大隈に入るのは、卒業以来始めてだが、意外と狭いのに驚く。
入場無料の性か、1階600人は満席で、2階席もいっぱいのようだった。
現役の生徒で沖縄関係の講座の者も多いようだ。
早稲田大学は、私がいた頃の学長大浜信泉氏も沖縄出身で、沖縄からの学生が沢山いた。
戯曲『人類館』は、1978年に沖縄の知念正真氏によって書かれ、その年に東京で上演され、岸田戯曲賞を受賞している。
私も、雑誌『新劇』に掲載されたものを読んだ記憶がある。
そして、現在竹橋の国立近代美術館で行われている展覧会『沖縄・プリズム 1872-2008』の一環として、30年ぶりの東京公演となった。
『人類館』は人類館事件を題材としているが、人類館とは1903年大阪で開催された「内国勧業博覧会」で、沖縄、朝鮮、台湾、マレー等の「原住民」の生態を見世物にしたパビリオンである。
劇は、その館の説明人、沖縄の男・女二人の全3人で行われ、1970年代当時のベトナム戦争下の沖縄までの歴史が演じられる。
沖縄の人間、風俗習慣、生活がいかに本土やアメリカから差別、蔑視されてきたかが、これでもかと表現される。
勿論、クライマックスは、第二次世界大戦下の沖縄戦の悲惨さで、改めて見せられると感きわまる。
だが、こうした「メッセージを生で劇として出すことは演劇の本趣ではない」と言うのが、この30年間の日本の演劇の進歩だと改めて確認した。
その意味で、大変貴重な一夜だった。
入場無料では文句は言えないが。
昔、知念氏の戯曲を読んだときも感じたことだが、現在ではこの劇的言語の水準では、多分高校演劇でも評価されないに違いない。