『永遠の1/2』

日本映画専門チャンネルの根岸吉太郎特集。
すばる文学賞受賞の佐藤正午の作品、脚本は内田栄一。
1970年代、日活の秋吉久美子主演の『妹』『赤ちょうちん』に似た、若い男女の不定形な関係を描く作品で、なかなか面白かった。

九州の市役所(佐世保らしい)に働く主人公時任三郎は、婚役者から婚約を破棄され、市役所も辞めてしまう。
競輪場で知り合った女大竹しのぶと半同棲になるが、そこ頃から時任は、彼に似た男と間違えられる事件に遭遇する。
その男は、女ぐせが悪く、人を騙して逃亡している奴らしい。
時任は、彼に会いたいと思うが、なかなか会えない。
だが、このもう一人の似た男と言うのは、実は存在せず、本当は彼の「自己像幻覚」である。
ゲーテから芥川龍之助の小説、あるいは川端康成の『古都』の双子の話も多分、川端自身の自己像幻覚から発想された話だろう。
大竹と時任も関係がはっきりしないが、最後、高校生中島朋子を介して似た男に会うと、全く似ていないことが分かる。
ここで、やっと時任は自己像幻覚から解放される。
そして、大竹とも結ばれることを暗示して終わる。
秋吉久美子映画とのつながりを示して、時任の父が藤田敏也、大竹の母は「見たことがあるが、誰だろう」と思っていたら、なんと小夜福子。
川上皓一のカメラが良い。

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