図書館を3館まわって資料を探し、コピーした後、フィルム・センターで川島雄三監督、池内淳子主演の『花影』を見る。
映画館で見るのは2回目だが、銀座のバーで生き、多くの男と出来るが、誰とも上手く行かず自殺してしまう、主人公葉子の悲しみが初めて理解できた。
池部良から有島一郎、高島忠夫、そして三橋達也と次々に男が代わるが、最後は自殺してしまう葉子。
勿論、作者大岡昌平の愛人だった女性が実際に自殺したことを基にしているが、大変良く出来た心理小説になっている。
自殺の直前、葉子は久しぶりに再会した池部と桜を見に行く。
青山墓地だと思うが、その桜の美しさは、カメラの岡崎宏三の見事な手腕である。
川島雄三映画と言うと、『幕末太陽伝』と来るが、あれは今村昌平等々の日活のスタッフの優秀さの結果であり、川島としては、この『花影』の方ができは良いのではないか。
さらに、特筆すべきは、骨董評論家(青山二郎のことらしい)高島を演じる佐野周二である。
かつては天才、鬼才と呼ばれたが、戦後社会の変化の中で零落し、詐欺まがいまでやり、周囲の者に寸借して生きている老人を演じている。二枚目の大スターの佐野が、こんな役をよく演じたものだと思う。
彼は随分さめた、自分を客観的に見られる人だったのだろうか。