トム・ストッパードの作品、演出栗山民也、主演は市村正親、秋山菜津子、武田真治で、1968年のチェコ事件とイギリスのロックを背景としたドラマである。
『コースト・オブ・ユートピア』が、19世紀末から20世紀のロシアの共産党員を描いたものなら、これは20世紀末から21世紀の彼らを描くものであり、傑作である。
市村と秋山は勿論文句ないでき。武田もよくやっているが、60年代後半のヒッピーで精神主義者の黒谷友香が問題、一人で浮いている、スタイルは抜群だが。
役者では、上山竜司が良かった。
この人は、本来役者ではないようだが、台詞の受け渡しが上手い。
見ていて気分の良い役者である。
1960年代以降のロックが使用されるが、「膨大な著作権料をどのように処理したのか」と心配になるが、中ではやはりビーチ・ボーイズの『ペットサウンズ』が心に残る。
だが、問題は観客の理解である。
武田真治を見にきたらしい、私の隣の20代の女性2人はまったく理解できなかったようで、「こんなに分からない劇は初めて」と言い合っていた。
そりゃそうでしょう、ハベル、ドプチェク、フサーク、あるいはシド・バレットと言われても、彼らが理解できないのは当然だろう。世界史って、高校で必修ではなく、教わったとだしても、現代はやらないのだから。
ここは、開幕前にスライドでも、1968年の「チェコ事件」についてくらいは、説明しておくうたべきだろう。
何しろパンフの中で、役者の一人が「当初は、外国語のように分からないことばかり」と言っているのだから。
『コースト・オブ・ユートピア』との差異は、蜷川幸雄と栗山民也との、テーマに対しての思い入れの差である。
世田谷パブリックシアター