『涙』から派生しただろう『あこがれ』


映画『涙』を見て、ここから発想された作品の一つは、1966年の内藤洋子主演の青春映画の傑作『あこがれ』だと思った。
恩地日出夫の『あこがれ』は、児童擁護施設で育ったが、渡り土工の父小沢昭一に付きまとわれている内藤洋子と、裕福な瀬戸物屋の養子になった田村亮の恋愛を描くものである。

この主人公の内藤洋子が、貧ずしい父親小沢昭一のために、なかなか幸福をえられないというのは、脚本の山田太一が、楠田芳子の『涙』のシナリオから、主人公たちに当てはめて改作したもののように思う。
勿論、この話は、横浜の南区にあった児童擁護施設、簡単に言えば孤児院を舞台にしたテレビドラマが原作なのだが。

この『あこがれ』は、施設の先生に新珠三千代、小夜福子、田村亮の養父母に加東大介、賀原夏子、最後にブラジルに横浜から移民していく田村亮の実母に乙羽信子と、脇役も大変良かった。
また、武満徹の音楽も、大変叙情的で美しい。
多分、恩地日出夫の監督作品では、共に内藤洋子主演の『あこがれ』と『伊豆の踊子』が、ベストだと思う。

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