珍しい新東宝映画が上映されるというので、日比谷図書文化館に行く。
元の日比谷図書館で、隣の野音ではロックのコンサートが行われていた。
1957年の新東宝の正月映画で、『戦雲アジアの女王』や『花嫁殺人魔』、『スーパー・ジャイアンツ』などと3本立てで、上映館ごとに違う組み合わせだったようだ。
因みに、新宿昭和館では、この3本の上映である。当時、東京での新東宝の一番の館だった。
脚本は内田弘三で、監督は勿論中川信夫、家光は古川ロッパで、家光は中山昭二。
凄いのは、将軍の御前試合があり、若山富三郎が宮本武蔵で、宇津井健が荒木又右エ門で出てくる。正月用のサービスだろうが、この二人って違う時代でしょうね。
大久保彦左衛門は、古川ロッパの当たり役で、長谷川一夫とのマキノ雅弘の物は有名だが、舞台でも何度も演じていたらしい。
意外にも新東宝としては結構立派なセットで驚く、長谷川康志による『ロッパ日記』によれば、撮影は新東宝第二撮影所、後の富士映画、大蔵映画、そして現在はオークラランドでも撮影されたようで、「汚い!」と書いている。
さすが中川信夫なので、テンポがよく無理なく見られる。
だが、この時期に、古川ロッパに大久保彦左衛門を演じさせたのは、かなり興味深い。と言うのも、この時期のロッパは、すでに過去の人で、人気凋落していて、それは時代に遅れていて、まさに彦左衛門のようだったからだ。
長谷川氏によれば、かつて多く作られた彦左衛門ものだが、これ以後、作られていないそうだが、どういう意味があるのだろうか。
映画の終了後、中川信夫監督を追悼する酒豆忌が行われたので、出る。トークショーにも出られた音楽の渡辺宙明先生がおられたので、『東海道四谷怪談』について聞く。
あの作品の音楽の胡弓は珍しく、日本映画史上初めてではないかとお聞きする。
渡辺先生の大学時代の友人に小泉文夫さんがいて、彼の示唆で胡弓を使ったとのこと。
小泉文夫さんも、渡辺先生も、共に東大なのである。91歳とのことだったが、先生は大変にお元気。
新東宝の録音スタジオは結構立派だったことも聞く。恐らく大蔵貢以前の時代には、音楽映画も多かったので、設備されたのだと思う。