『上を向いて歩こう』

大晦日の夕方に、日活の青春スター総出演の舛田利雄監督の『上を向いて歩こう』が放映された。
少年鑑別所から脱走した坂本九と浜田光夫の話で、吉永小百合、高橋英樹、渡辺トモ子らのスターが出る青春映画。
前にもBSで放映されて、その時は気がつかなかったが、浜田がバンド・ボーイをするジャズ・バンドの演奏が、実に先端的なのだ。
なんと、モード手法である。
モード手法は、1960年代当初にマイルスやコルトレーンが始めたものだが、ここではそれをすぐに取り入れている。
音楽は、勿論中村八大だが、彼も前はジャズのトップ・ミュージシャだったので、ジャズ界の動向には敏感だったのだろう。

ラストで国立競技場を列を組んで歩くスターの中に、日本中の人間のショットが挿入される。
主に各地で働く姿だが、多分これはチーフ助監督だった河辺和夫らが撮ったものだと思うが、なかなか良いショットが続いている。
河辺は、後にドキュメンタリー映画に行った人なので、そのセンスもあったのだと思う。

今とは、確かに隔世の感がある。
労働者等の姿を見ていると、なんともいじらしい気がした。
当時の日本人は、皆「明日は良い日のなる」と信じていたのである。
テレビ東京

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