昨年出た中野正昭の労作『ムーラン・ルージュ 新宿座』と同様に、この映画も美術監督中村公彦から始まる。
中村は、戦後ムーランに入り美術を担当し、ムーランが昭和26年に閉鎖された後、松竹を経て日活に入り、川島雄三の『幕末太陽伝』や今村昌平の『豚と軍艦』等の美術で活躍された。
ラサール石井の解説で進行する。
昭和6年、新宿東口にできた劇場ムーラン・ルージュからは、多彩な才能が出ている。
俳優では、望月優子、森繁久弥を筆頭に、有島一郎、由利徹、左朴全、楠トシエら、スタッフでは菊田一夫、伊馬春部、阿木翁介、中江良介の作者など。
テレビ、映画で活躍した森川時久も舞台監督だった時のことを、観客だった野末陳平との話で回想する。
ムーランから、多くの才能が出たのは、主催者の佐々木千里が、「去るものは追わず」として、認めあられた者たちの引き抜きをむしろ積極的に捉えていたからである。
ムーランにずっといたことになったのは、佐々木の養女でもあった明日待子のみだったのは、その性だったが、明日待子は90歳で、今も札幌で日本舞踊の師匠としてご健在だった。
最後、映画『男はつらいよ』に出た三崎千恵子も、入所先の施設で昔の仲間と再会するが、この直後彼女も亡くなった。
明日待子のSPレコード『上海のまちかど』は、勿論岡田則夫さんのもので、その録画も岡田さんのご自宅の蓄音機で再生されたものだそうである。
黄金町シネマ・ジャック