やはり脚本がきちんとしていないとだめということの典型の作品。
寺山修司が、『O嬢の物語』を原作に1981年に日仏合作で映画化したものを基に、プロジェクト・ニクスが劇化し、毬谷友子、中山ラビ、水嶋カンナ、蘭妖子、フラワー・メグらの他、特別出演格で吉田日出子までの豪華キャスト。
寺山の映画は、フランスのアナトール・ドーマンの製作で香港で作られ、寺山も非常に苦労したそうだが日本では全く当たらなかった。
唯一、撮影中に某男優が「日本映画史上最初の本番をした」という噂のみが残った。
構成は宇野亜喜良、演出は金守珍だが、結局画家宇野亜喜良の構成なので、各シーンをきれいに設定したのだろう、美しい場面もあるが、全体を貫くテーマや情感といったものがなく、これでは感動のしようがない。
1920年代の上海の娼館・春桃楼の話で、そこでの男女の恋愛、争い、殺人等の中に、寺山的な修辞と台詞が散りばめられているが、きわめて散漫で、一つの劇的イメージには結晶しない。
毬谷友子は、歌も演技も良いが、それ以上の感動には至らない。
第一、彼女は本質的に熱演型の演技で良さが出る女優なので、この劇のようにシラケた役は良くないのである。
このような素人宝塚のようなことをやっていては、プロジェクト・ニクスも、ファンには歓迎され、演じている人や関係者も楽しいだろうが、それ以上にはならないと思う。
もっと脚本をしっかりとすることを望みたい。
こういう雰囲気の劇は今は大変少ないので、貴重だとは思うのだから。
一つ気になったのは、吉田日出子のことで、ひどく太って見え、台詞はすべて録音。
ナマは『ウエルカム・シャンハイ』のみで、退場時には若い男に抱えられるようにしていたが、体が良くないのではないか。
彼女も68歳なので、もう若くはないのだが。
東京芸術劇場シアター・ウエスト