『酔いがさめたら、うちに帰ろう』

アルコール依存症が主人公ということで、見ないでいたが、意外にも良い映画だった。最近の東陽一作品では一番良いのではないか。

東陽一作品の良いとこころは、女優を選ぶセンスの良さと画面と撮影の自然さだが、ここでもそれは十分に発揮されている。

原作は、カメラマンでアルコール依存症を経て、ガンで亡くなった鴨志田譲で、妻はよく知られているように漫画家の西原理恵子で、これを浅野忠信と永作博美がきわめて自然に演じている。

永作は、冒頭で医師に宣告される。

「この病気では誰も同情しません。自業自得と見られますから」

アルコールや薬物の依存は、緩慢な自殺だとの説があるが、酒が嫌いではない私にも他人ごとではないが、主人公の飲み方は尋常ではない。

そして、飲酒で暴れたときの記憶が一切ないのが、アルコール依存症の典型である。

なぜなら、この世の平生の時間から逃れ、記憶をなくしてトリップしたいというのが、彼らの飲酒の一番の欲求なのだそうだから。

その意味では、この映画は普通の作品と随分変っている。普通、映画は主人公に同情するように進行するからである。

映画の大部分は、アルコール依存症のために入院した精神病院での話になる。

さまざまな入院患者がいるが、それは、組織と同じであり、普通の社会の反映でもある。

多くの個性的な俳優が出ているが、中では病棟の自治会長をつとめるが、新入患者とのトラブルから脱走してしまう男が良いと思っていたら、蛍雪次朗だった。最近、あまり姿を見なかったので、懐かしい気がした。

その他、女医の高田聖子、永作のアシスタントの西尾マリなど、良い役者が出ていて、非常に抑えた演技をしている。

最後、浅野はガンであっ気なく死んでしまう。

これも人生である。

衛星劇場

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コメント

  1. 素顔のままで より:

    見ましたよ
    これ、ハリウッド始め欧米ならさぞ秀作に仕上がったと思いますな。