『戦前日本SF映画創世記 ゴジラは何でできているか』 高槻真樹(河出書房新社)

今、『ゴジラ』が話題となり、戦後の東宝の特撮が注目されているが、この特撮映画は、戦後急に現れたものではなく、戦前のサイレント時代からあったことを丹念な資料調査によって明らかにした本である。


いろいろと興味深いことが書かれているが、日本映画創世記の大スター「目玉の松ちゃん」こと尾上松之助映画のプリントは1本しかなく、それを使いまわしていたので、すぐに消耗してしまい、現存するものが少ないこと。
また、前衛映画の草分けで、海外でも高く評価された衣笠貞之助監督の『狂った1頁』は、16コマで撮影されているので、16コマで映写しないと本当の良さが分からないこと。
映画撮影のコマ数は、サイレント時代は大体16コマで、トーキーになって24コマになったのである。
さらに、大都映画、極東映画、全勝キネマ等で作られたロボット、キング・コング等の作品についても触れている。
大都映画は、東京だが、極東映画と全勝キネマは、関西の会社だったので、記録も乏しく、また評価も少ないこと。
ただ、逆に言えば、戦災の被害も少なかったはずなので、こうした関西の会社のフィルムは、まだどこかに残っている可能性もある。
当然のことだが、戦後も1954年になって急に円谷特撮が現れたように思われているのは間違いで、戦前の東宝の航空教育資料製作所での軍発注の「教材映画」の製作にあったことは、拙書『黒澤明の十字架』で私が明らかにしたことである。

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