『嵐を突っ切るジェット機』

1961年の日活映画で主演は小林旭。日活には航空映画の流れがあり、石原裕次郎には傑作の『紅の翼』があるが、これはそれには遙かに及ばない。
その理由は、小林旭と監督の蔵原惟繕との相性の問題もあろうが、飛ぶ航空機がジェット機であることも理由の一つだと思う。
プロペラ機には、SLに似た人間くさいドラマが似合うが、ジェット機にはドラマが生まれにくいようだ。
浜松の航空自衛隊のアクロバット・チームの暴れ者が小林旭だが、ある日隊長の芦田伸介が事故で死んでしまいチームは解散し、彼と同僚の郷暎治は金沢へ転勤させられてしまう。
そこでも問題を起こした小林旭は、休養を命じられ、東京で小航空会社をやっている兄の葉山良二のところに来る。
撮影場所は、今の東雲にあった小型機の飛行場らしいが、そこに中層の焼け跡のようなビルがあり、葉山の会社は、草薙幸二郎、高原駿雄、高品格らのポンコツな連中でビラマキ飛行などで細々と営業している。
このビルは、随分と都合よくあったなと思うが、見ている内に、「これはわざわざ撮影用に作ったものではないか」と思えてきた。
やはり木村丈夫の美術は凄い。
金に困った葉山は、やはり以前に一度だけ密輸を手伝ったことのある中国人山内明の依頼で、沖縄への密航を運んであげることになる。
それを知った小林旭は、最初はボロセスナで追いかけるので、羊頭狗肉ではないかと思うが、途中で警察から自衛隊に追跡の依頼があり、旭は、F6Fに乗って山内らを追い、小さな島で逃走した飛行機を見つける。
そこには葉山や山内もいて、撃ちあいの末に葉山は死に、悪漢は退治される。
そして、兄の会社を継ぐため、自衛隊をやめる最後のフライトに旭が出ていくところでエンド。

この映画は、ラピュタの笹森礼子特集で上映されるので見に行ったもの。
笹森は、ラジオ東京テレビの人気番組『日真名氏飛びだす』の、三共のドラッグストア・ガールとしてデビューし、日活で映画に出るようになった。
目が異常に大きな女優で、浅丘ルリ子に似ているが、主に赤木圭一郎の相手役でかなり出ていた。
彼女は、大田区の出身で、その性か、1950年代の末、本門寺で行われた夏の盆踊りに、『日真名氏飛びだす』チームとして来たことがあった。
日真名氏の久松保夫の他、高原駿雄、そして笹森礼子だったと思う。
記憶しているのは、ドラマのように久松がパイプを銜えて何かを探るように歩いていたこと、あわて大作の高原が、番組同様に滑稽な仕草を見せていたことで、子供ながら「役者というのは不思議な者だな」と思ったものである。
特に大した女優ではないが、一応1960年代の日活映画を飾る女優の一人だろう。

映画史的に言えば、赤木圭一郎の遺作で、多分牛原陽一郎監督作品としてもベストと思われる『紅の拳銃』に赤木の相手役として主演したことだろう。
ここでは、彼女の大きな目を生かして、盲目の設定で、最後手術に成功して目が見えるようになって、列車で赤木とすれ違い、盲目だったので赤木とは分からず、
「この人かしら」とつぶやくラストが最高だった。
音楽が伊部晴美だが、当時大流行のアート・ブレイキーの『ブルース・マーチ』そっくりの曲がタイトルとはまさにモダンジャズの時代である。
阿佐ヶ谷ラピュタ

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コメント

  1. 街道 より:

    Unknown
    赤木「紅の拳銃」・・
    笹森礼子エピソードはいいとしても

    映画荒筋喋るなど 映画ファンに対する冒瀆では?

    映画解説読み映画鑑賞しますか? 期待半滅・・

  2. 筋を知っていても
    筋を書くのは問題とは思っていません。
    筋を知って、その作品を見ないというのはおかしいと思います。
    『七人の侍』や『東京物語』の筋をほとんどの人が知っていながら、皆見ているではないですか。
    戦後の小津安二郎作品の筋を正確に思いだせますか、ほとんど同じですからごんがらがってしまいますね。
    何しろ、出演者ですら間違って記憶しているほどなのですから

    また、好きな作品だと何度も見るのも、映画にとって筋など関係ないからです。そこに至る表現、手順が重要だからで、表面的な筋などどうでも良いからです。

    山田宏一さんも、好きな映画を何度も見るのは、私は筋を結局は忘れてしまうからだと書いておられます。