TVKニュースを見ていたら、川崎市役所がでてきた。
現在では、神奈川県内で唯一現存する戦前の市庁舎なのだそうだ。
そこには時計台があるので、テレビのドラマで出てくるので、よく知られているだろう。
戦時中は、ここは軍の防空監視哨で、敵機を監視しその都度県に報告していたという。
担当者だったという90歳の方が出てきて、塔に登られた。ひどく狭いところだが、そこに小屋を建てて、8組の人間が組織されていて、24時間監視していたそうだ。
1945年4月15日には、川崎市も大空襲に襲われたが、奇跡的にも川崎市役所は無傷で残った。
この空襲は夜間に行われ、いきなり米軍の大編隊が来襲し、爆弾投下の音が終わった後、暗闇の中で一斉に火の手が上がったそうだが、日本軍はなにもできなかった。
この川崎市役所がモデルになっている、大変有名な映画がある。
1952年の黒澤明監督の『生きる』である。この映画の主人公の志村喬は、市役所の役人で、胃がんに冒されて、何か意義ある仕事をしようと町の中の汚いドブ河を公園にして、死んでゆく。
この志村喬が勤務しているのが実は川崎市役所をモデルにしているのである。
1年前に世田谷美術館で開催された「東宝スタジオ展」の図録にはっきりと川崎市役所とペン書きされていた。
この建物は、老朽化で、今年2月からは使用されておらず閉鎖されている。
今後新庁舎ができる計画になっているが、ここは残し、この建物の裏に高層ビルが作られるそうだ。
ぜひ、その際は、映画『生きる』のこともどこかに残してもらいたい。