『鮫』

真継伸彦原作、鈴木尚之脚本、田坂具隆監督、主演中村錦之助。
室町時代、北陸の漁村で鮫と呼ばれた流民の錦之助は、村での差別(鮫は明らかに被差別民)から逃れ、京に出て、盗賊となる。
人肉食い(上京の際、連れの女木暮三千代が飢え死にした人間の内臓を食うシーンがすごい)、盗み、殺人、暴力、強姦等を重ねる。
さらに、応仁の乱に加わり、手柄を上げるが、和平で武士になる夢も消える。
加東大介らと野盗となり、都中を荒らす。
ある寺に押し入り、尼僧(三田佳子)を暴行しようとすると、その尼僧は鮫に身を委ねようとし、鮫は逆に出来ない。

その尼僧が、蓮如上人の娘であることを知り、鮫は尼僧を求め、浄土真宗に帰依することを示して終わる。
正に「悪人正機説」の絵解きだが、堂々たるメッセージ、錦之助の入魂の演技、劇の展開の面白さに、3時間近い大作だが、全く退屈せずに大変感心した。

また、佐藤勝の音楽が、漁村の仮面を付けての夜祭り(要は、フリー・セックスの一夜)、京での飢饉・飢餓の民衆をなだめるための祭り、さらに野盗連中の酒池肉林の際に、伊福部昭を思わせる、ドンドコと打楽器の異教徒的な音楽が最高だった。

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