インドIT革命と『綴方教室』

NHK・BSでやっていた『地球特派員・2006』は、姜東大教授と伊藤洋一の「インドのIT革命の現場」報告で、とても面白かった。

インドIT産業が、下層カーストの優秀な人材を発掘し、カースト制を打破する動きがあること。
都市の中産階級の消費が大きく増大していること。
一方で、農業のグローバル化で疲弊し、自殺者が増加する農村があることなど、だった。

一番すごかったのは、最エリート校のインド工科大学入学を目指す学生の予備校だった。
トタン張りの掘立小屋のようなところに、500人の学生が勉強している、そのエネルギーのすごさ。
間違いなく、インドは21世紀の大国になる。

戦前の名作に、山本嘉次郎監督、高峰秀子主演の映画『綴方教室』がある。
東京下町、足立の極貧の一家の話。
飲んだくれの父親徳川夢声は、ほとんど失業状態の職人だが、高峰は小学校に行っている。
これだけでも、今の途上国よりは上。
成績優秀なのを惜しみ、先生(左翼的な滝沢修)らの努力で、高峰は就職するが、夜間中学に行くことになる。

日本の庶民への教育は、江戸時代から高水準だったことは、今では常識だが、極貧階層でも初等教育を受けていたことは、現在の途上国より遥かに上であった。
そうしたところから、松下幸之助や本田宗一郎も出てきたのだろう。

インドは、まだカースト制が存在し、それを緩和するため、大学受験に際して、
下層カーストを優遇する「リザーブ」という制度もあるそうだ。

だが、法のみで、カーストや階層問題の対策は無理である。
日本では明治時代から、地方の富裕層により、下級の成績優秀な若者に私的に奨学金を贈与する習慣があった。
地方の地主等の責務として、そうしたことが私的に行われていた。

インドでカースト制が解消されれば、それは戦後の日本の「農地改革」と並ぶ途上国での農民革命、階級社会解消の大きな実績である。
インドでは農地の大土地所有・小作制は完全になくなったのか、番組では不明でだったが、多分相当に解消されているのだろう。

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