こういう作品をみると、映画は難しいものだと思う。一流の脚本(橋本忍)、監督(石井輝男)、俳優(高倉健、梶芽衣子ら)で作りながら、まったくいただけない出来なのだから。
1973年当時、東映もヤクザ映画の行き詰まりから、橋本忍に脚本を依頼したのだろうが、石井監督によれば、主役の「高倉は、英語をペラペラしゃべるような男で困った」と言っている。
カメラマンの梶芽衣子は、南島での戦闘で失った父親の日本刀・備前正宗をアメリカから取り戻してきた銀座の寿司屋の高倉と知り合い、二人は恋に落ちる。
梶芽衣子は美人女優だが、この頃が一番きれいだったと思う。
また、彼女には『修羅雪姫』のようなアクションものもあるが、むしろこの映画のような普通の家の美女が一番合っていたと思われる。もし、小津安二郎のような監督がいたら、彼女を原節子のような役に起用したと思うのだが。
さて、高倉は、元ヤクザで、そこでは競馬のノミ行為をめぐって、関西の組を代表して安藤昇が上京し、関東の組と連携しようとする。
関東の小池朝雄らは、この連携に対して分裂し、さらに関西との争いになり、高倉も最後は悪の巣窟に殴り込んで、日本の黒幕の辰巳柳太郎も刺殺する。
深作欣治の『仁義なき戦い』も出ていた時期なので、ヤクザ同士の裏切りあいや凄惨な殺しの場面も出てくるが少しも面白くない。
やはり、リアリズムの橋本とモダニズムの石井では水と油だったのだろうか。
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