『うるさい妹たち』

この数年間に見た映画で一番面白い作品だった。
増村保造監督、白坂依志夫脚本だから、それなりのものだとは思って行った。
でも、こんなに良い映画とは知らなかった。
1961年、傑作『妻は告白する』の直後の作品である。

深夜の町を中年紳士永井智雄が車を運転していると、仲宗根美樹がいきなり飛び出し、車を止めて男女の若者が乗り込んで来て、皆でホテルに行く。
感じとしては、横浜あたりだろう。

高校生の仲宗根とはいろいろあるが、結局やらず、永井の秘書で、実は仲宗根の姉岩崎加根子とは出来てしまう。
真面目な岩崎と嫌らしい永井のぎこちない情事の描写が面白い。
永井は色好みの中年役が多く、渋谷実の映画『もず』では、淡島千景とその娘有馬稲子と「親子どんぶり」になるが、ここでは「姉妹どんぶり」近い関係になる。
彼は、大企業の副社長だが、株は持っていなくて高利貸の息子仲村隆に、自分の娘江波杏子を結婚させ、株を持とうとしている。
だが、実は江波も、仲宗根らと同じ「六本木族」なのだが。
そこには、仲宗根や貧乏画家川口浩のような貧乏な連中もいるが、ミッキー・カーチス、江波杏子等の金持ちの子弟もいる。
彼らの間の葛藤、大人との争い、騙し合いなど展開が息もつかせないほどめまぐるしく、先の筋が読めない。
そして、例によって歯切れの良い台詞、論理的な言い合いなので、全く飽きない。
白坂依志夫は「六本木族なんて本当はいなくて、適当に書いた」と言っていたが、確かにそうだろう。
最後、仲宗根は、永井から脅し取った金で、川口に銀座で個展を開かせる。

公開当時、遅れてきた「太陽族映画」と言われたそうだが、日活に比べてすべてがダサい大映青春映画の独自のリアリティがある。
音楽は、真鍋理一郎、制作は中島飛行機の御曹司で、後に衆議院議員になり、文部大臣にもなった中島源太郎氏。
大映には、永田雅一の関係で、こういう偉い方の子弟が沢山いたようだ。

隠れた大傑作と言うべきだろう。
土曜日にもう一度見に行くことにする。

白坂依志夫によれば、「六本木族など、いなくて適当にでっち挙げた」のだそうだ。
確かに私の経験から言っても、なんとか族というのは、日本にはなかったと思う。

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