江波杏子主演の「女賭博師」シリーズの1作である。
これは、青山光二の本によれば、ある日永田雅一が、夢のお告げで、「年末までに女のヤクザ映画を作れば当る」と出た。
翌日、当時大映でフリーの製作者をしていた伊藤武郎に「お前が作れ!」と言い、始められたものだそうだ。
勿論、伊藤武郎も、賭博のことなど知らないので、共に戦後すぐに東宝にいて、ヤクザの小説を書いたこともある青山のところに相談に来た。
青山も賭博のことは良く知らなかったが、調べて教え、それを基にシナリオが書かれ、現場でどんどん撮影が進められたそうだ。
主演は、本来は若尾文子だったが事故で下り、江波になったとのこと。
本当は、若尾は自分の経歴に傷が付くと思い避けたのではないか。
だが、この田中重雄監督作品は、本当にすごい。
最高の「絶対映画、純粋映画」と言うべきものだろう。
日本映画史上、これほど無意味、非論理的な筋の映画もない。
女の賭博師の言うのがまずありえないし、花札賭博の技も本当かと疑えるが、ほとんど気にならない。
さらに、江波杏子のクールな表情と演技、田中重雄監督のテンポの良さが、すべてを救っている。
後の女賭博師ものと比較すれば、多分当初の配役が若尾文子だったため、南広との平凡な生活を望む部分が多い等の問題はあるが。
東映の藤純子の「緋牡丹お竜」シリーズの亜流だとずっと思っていたが、実は大映のこのシリーズの方が先だったのだ。
日本映画専門チャンネル