昨年、秋吉久美子の初主演作『16歳の戦争』のときにも書いたが、映画監督松本俊夫ほど、評価の低い、不遇な監督も珍しいと思う。
川崎市民ミュージアムの『紀要』に彼のインタビューが載っていたので買い、電車の中で読んでいて夢中になり、思わず横浜駅で降りそこなうところだった。
東大在学中の当時の学生運動に絡んだところ、新理研映画社に入り、そこの社長が社会党右派の人間だったが、でたらめな会社だったこと、最初の作品『銀輪』を制作の際に特撮があり、東宝の円谷英二のところに行ったとき「東宝に入らないか」と言われ、「ゴジラは私がやりたいことではない」と断ったことなど、面白い秘話が沢山あった。
松本は意外に抽象的なところがあるので、SF映画は向いていたような気もするのだが。
松本は、『16歳の戦争』もそうだが、最初の劇映画『薔薇の葬列』では、無名時代のピーターを使っているなど、ジャーナリスティツクな意味でも極めて異色の人間を使っている
それなのに、高い評価も得ず、また映画が商業的にも当たらないのは、真面目過ぎ、また世渡りが下手なのだとと思う。