1970年、ダイニチ映配に移行する直前の大映末期に公開された時代劇映画
市川雷蔵主演で作られてきた「忍びの者」シリーズでは最後で、雷蔵はなく、松方弘樹と峰岸隆之介が主演している。
さらに本郷功次郎や安田道代、さらに藤村志保も出ている。
タイトル前の凝った画面と重厚な音楽から、あるいはと思ったが、やはり監督は森一生だった。
この後、ダイニチ時代にも、森一生は峰岸隆之介主演で、「出獄48時間シリーズ」を作るなど、最後まで大映にいたのだ。
話は、織田信長が死に、豊臣秀吉(戸浦六宏)と柴田勝家(内藤武敏)の争いの時代になっている。
本郷、松方らは、秀吉から、柴田家に嫁いでいる「美女お市の方(藤村志保)を生きたまま連れてこい」との命を受ける。
伊賀者を秀吉が使ったかな、と言った疑問は持たないようにすること。
筋は、いろいろあるが、一つ面白いのは、伊賀者の先達に愛染明王というすごい忍者がいて、それが松方らを妨害すること。
そいつは誰にでも化けるのが得意で、松方の恋人の南美川洋子にも化けて出てくる。
南美川洋子は、大映末期の清純派の美人女優だったが、東京の現代劇が多く、時代劇に出ているのは珍しい。
安田道代が、柴田勝家の部下を色仕掛けで騙し、柴田軍を混乱させたスキに、お市の方を城から無事運び出して来る。
だが、彼女は「もう政争の具して生きるのは嫌だ」と自害し、峰岸らも自分たちと同類と同感し、お市の方を北の庄の城へ返すことにする。
娯楽映画の名手森一生としては、物足りないできだが、末期の大映としては仕方ないところだろう。
鏑木創の音楽は重厚である。
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