小幡欣司 死去

劇作家の小幡欣司が亡くなった、82歳。
彼は、菊田一夫亡き後の東宝現代劇のエースだった。当時、新作劇を書ける脚本家は、小幡の他、『たぬき』など芸能界の話の榎本慈民、赤報隊を題材とした『草の根の志士たち』など歴史劇の野口達二もいたが、小幡が一番多く書いていたと思う。
すでに榎本も野口もなって久しく、最後に残った小幡も亡くなり、商業演劇で骨格のしっかりとした脚本を書ける作家は随分少なくなっている。

小幡欣司が東宝で書くようになったのは、五味川純平の小説『人間の条件』がきっかけだった。
当時、小幡は小さな新劇劇団葦にいて、五味川が贔屓で、そこに劇化権を与えていた。
菊田一夫が『人間の条件』を東宝現代劇で上演しようとしたとき、その劇団葦と東宝現代劇との合同公演と言う形で、五味川が上演を許可し、小幡も作者として東宝側、具体的には菊田一夫と付き合うことになったのだそうだ。
その後、菊田演出の脚本、さらに菊田没後は、原作ものの脚色や新作の作・演出など大活躍してきた。
そして、この10年くらいは新劇の劇団民芸への書き下ろしで優れた作品を書いて来た。
去年の歌舞伎の大作者・鶴屋南北や大道具方・長谷川勘兵衛らを描いた『どろんどろん』が遺作になった。

彼には、菊田一夫の唯一の評伝『評伝 菊田一夫』もあり、これは菊田の謎の出生から、晩年の女性たちとのことまで、正確かつ公平に書かれた大変面白い本である。
日本の大衆喜劇、さらに商業演劇の裏側を描いたものとしても、千谷道雄の『幸四郎三国志』と並び大変貴重なものだと思う。

死因は肺ガンで、彼はヘビー・スモーカーだったそうで、やはりタバコだろう。
これで、井上ひさし、つかこうへい、小幡欣司と日本の演劇界は、貴重な作家を3人とも肺ガンでなくしたことになる。
日本劇作家協会は、禁煙を会員に徹底する必要があるね。

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コメント

  1. 綾よしかず より:

    小幡欣二氏
    指田さん 久しぶりにHPを拝見しました。
    小幡氏の訃報を知りました。癌でしたか、 氏は酒も好きで 焼酎を牛乳割でグビグビ 楽屋でミル酎パティと称し 座付き役者たちと一緒の時間を大切にされてました。 殊に端役の俳優さんとは意気投合され満面の笑みを思い出しました。このころは(芸術座)ですが哀悼を込めてオバキンさんと ご冥福を。