朝から阿佐ヶ谷に頑張って有馬稲子の『充たされた生活』、『非行少年』、『竜巻小僧』はテレビで見たので抜かして、昔見て面白かった『人間に賭けるな』
の3本を見る。
1962年の『充たされた生活』の表現の斬新さに圧倒された一日だった。
羽仁進の作品は、後の1970年代の東陽一監督の『サード』『もう頬杖はつかない』を先取りしていた映画だったことを初めて知った。
やはり羽仁進は天才である。
この映画は、二つの意味で、貴重な記録になっている。一つは、有馬稲子が一番きれいだったときの映像で、水着姿もある。
もう一つは、東京オリンピック以前の東京の姿である。
有馬が住む、木造アパート群、田村高広と劇団の切符を工場に売りに行くときに出てくる厚木駅、まるで地方のローカル線の駅舎である。
山師のような男アイ・ジョージと結婚していた女優の有馬稲子は、離婚して劇団に戻る。主催者は原田甲子郎で、男優は田村高広ら。
妻を亡くした田村と、離婚して独身だった原田の双方から有馬は求婚されるが、決心はつかない。
劇団では、1960年の安保条約の改定をめぐり、次第に議論が交わされるようになり、中には穏健派の青野平義のような反対派もいる。若手団員に福田
義之がいて、有馬と田村が行くビア・ホールの客には、監督補だった土本典明の顔も見える。
長野重一のカメラ、武満徹の音楽も素晴らしいが、羽仁進の役者への自然な演技付けがすごい。きわめて先進的で、まったく自然である。
台詞は、同時録音かと思うと、おそらくアフレコだろう、時々合っていないところもあるので。
映画『非行少年』の監督は日活の河辺和夫だが、撮影は井上完、録音は安恵重遠と左翼独立プロのスタッフである。
役者も木島一郎以外は、波多野憲、長浜不二雄らなどの新劇役者で、次の『非行少年・陽の出の叫び』は、民芸映画社に藤田敏八と助監督の岡田裕が
行くものになる。1964年だが、日活の製作体制が揺らぎ始めていたということだろう。
普段は偉ばっているが、不良に追われると弱腰になる教師の木島一郎は、本当は強い男で、映画『戦争と人間』では、軍事指導をやっているくらいなのだ。
人間に賭けるな』は、日活得意の競輪映画で、『ガラスのジョニー・野獣のように見えて』『競輪上人行状記』につながっている作品。
だが、非常に観念的なのは、脚本が森川英太郎・田村孟という創造社だからだろうが、間宮義雄のカメラと伊部晴美の音楽が美しい。
渡辺美佐子の妹役で、結城美枝子が出ているが、彼女は最近は女優はやっていないようだ。
以上は、昨日、フェイスブック http://facebook.com/fumio.sashida/ にすぐ書いたものから再編集した。