戦前に産児制限から労農党の代議士として活躍するが、右翼に刺殺された山本宣治を描く伝記的映画。
面白いのが、脚本が左翼の山形雄策と共に、依田義賢であることだろう。依田は、溝口健二作品の脚本で有名だが、意外にも山本薩夫作品もあり、『荷車の歌』も依田脚本である。
それもそのはず、依田義賢も若いころは、左翼的な詩人として活動し、警察に逮捕されたこともあるのだ。
この山本薩夫作品は、私は高校生の時、今はない豊島公会堂で見たことがあり、後に山本薩夫特集で、横浜のシネマジャックでも見ているので3回目だった。
ただ、今回は16ミリフィルムからなので、少々ピントは甘かった。
音楽は林光だが、随分と劇的なメロディーを付けていて、林光もこんな音楽を書いていたの、という気がした。
役者では、当初は争議破りをするが、後に同志となる百姓の小沢昭一、インテリ学生から転向し、満州に行って片足で戻ってくる中谷一郎の描写は、松本俊夫には紋切り型と強く批判されたが、今回見るとさして気にならなかった。
この大東映画は、草津で映画館をやっていた角正太郎氏が作った映画会社で、これと今井正の『キクとイサム』を作っている。
新文芸座