『あの波の果てまで・後編・完結編』

一昨日の前篇は、『アルマ・マーラー』に行ったので、残念ながら見られず、後編と完結編のみ見たがなかなか面白かった。主演は岩下志麻と津川雅彦、監督八木美津雄。
愛し合っている岩下と津川が、野心家石浜朗らの妨害で、なかなか結ばれない悲恋のメロドラマ。勿論、最後はハッピーエンド。
すごいのは、「結婚するまでは」と二人がセックスしないことを誓いあうところ。
現在の安倍内閣下の文部科学大臣らが見たら、性道徳堅固で泣いて喜ぶに違いない。

原作は大林清。この人は、通俗劇の原作を多数書いた人だが、元は長谷川伸主催の「新鷹会」なので、話はしっかりしている。
また、八木の演出も、多数の大スターにそれぞれ見せ場を作っていて、なかなか上手い。歌舞伎の手法だろう。
岩下の生みの母で、真珠養殖業者加藤嘉らを捨てて逃げた母は高峰三枝子、育ての母が沢村貞子、その他西村晃、高野真二らの悪役連中も笑わせてくれる。
石浜をそそのかし会社を作らせた部下の西村晃が、岩下をお好み焼屋に連込み口説くところが最高で、大爆笑。
岩下の友人葵京子とその夫北上弥太郎もコメディー・リリーフ。北上は、東映の地味な時代劇役者の記憶しかないので、コメディが上手いのには驚いた。彼は歌舞伎から映画界に入ったが、最後はまた歌舞伎に戻った。

津川が最後に乗り組む漁船の船長が伊藤雄之助で、愛人が今年亡くなられた桜むつ子。

全体に、1961年制作のこの映画には当時全盛だった日活映画の逆輸入的表現がある。
岩下が、津川を探して岩手の漁港に来るとちょうど祭りで、祭りのパレードの中を探すなど、松竹大船出身の斉藤武市監督の『渡り鳥シリーズ』の方法である。
松竹メロドラマも時代変化の中で、いろいろ模索していたわけである。
川崎市民ミュージアム

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