節段説教を知ったのは、やはり小沢昭一の著作からで、カセットもLPも持っているが、実際に聞くのは初めて。この事業を知ったのは、眺花堂の渡辺信夫さんの月例イベント情報からで、教えてくれた渡辺さん、本当にありがとう。
今回は、研究会ができて10周年記念大会とのことで、築地本願寺本堂は満員だった。
朝の10時から夕方4時まで、全国の説教者が、その芸を披露した。
芸と書くと問題といわれるかもしれないが、もともと説教には芸能的要素があった。
なぜなら、普通の人に宗教を説くにしても、面白可笑しくやらなければ誰も喜んで聴かないからである。
江戸末期に成立した節段説教は、浄土宗を中心に普及し、北陸地方には「説教所」といわれる小屋も各地にでき、そこを廻る説教師もいたそうだ。それが、説教節や浪花節、落語などにも影響したのは間違いのないことだろう。
演者の中では、桜庭尚吾師、長谷部裕真師、さらに廣陵兼純(ひろおか けんじゅん)師がよかった。
特に、廣陵兼純師は、昭和の名人と言われ、蓮如上人の生まれ変わりと言われた範浄文雄(のりきよ ぶんゆう)師について修業された方で、まずその低音の鍛えられた声がすごい迫力だった。
そして、小沢昭一が書いた通り、各師の話の始まりと終わりには、拍手はなく、「南無阿弥陀仏・・・」のつぶやきの波。
非常にすがすがしい気分で、本堂を出た。