このサイトの由来にもなっている、映画『さすらい』の監督ミケランジェロ・アントニオーニが、人気絶頂のアラン・ドロンを迎えて作った有名な作品。
主題歌も、日本では園マリが歌ってヒットした。
話は、倦怠期の夫婦モニカ・ビッティが、証券取引所の青年アラン・ドロンと知り合い、愛し合うが何故か虚しいというもの。
1960年代当時、「愛の不条理」とか、「愛の倦怠」映画と言われ、我が日活の蔵原惟善監督の裕次郎・ルリ子の、『憎いあンちくしょう』『銀座の恋の物語』『何か面白いことないか』等も大きな影響を受けている。
だが、今見ると全くつまらない。
「なんだ、こんなものは」という映画である。
背景には、イタリア証券市場の大暴落があるらしく、アントニオーニのドキュメンタリーな描写は良いが、それ以上のものではない。
アントニオーニは、初期の『さすらい』が最高で、他は余り大したことない、というのが現在の私の見方である。
『さすらい』は、言ってみれば日本の成瀬巳喜男のような映画で、男女関係の機微や儚さ、虚しさ、と言った情感が極めて上手く表現されている。
日本もイタリアも、共に第二次大戦の敗戦国で、経済的貧困から立ち直れず、戦後の新しい社会にも適合できない中年庶民が見事に描かれている。
最後、妻を捨てて出奔した主人公が故郷に戻ってくる。
そこでは米軍基地反対運動が行われている。
主人公は、勿論それにも同感も出来ず、塔から落ちて死んでしまう。
そこに反対運動の連中が駆けつけて来る。
最高のラストシーンだった。
コメント
>>日本もイタリアも、共に第二次大戦の敗戦国で、経済的貧困から立ち直れず、戦後の新しい社会にも適合できない中年庶民が見事に描かれている。
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こんなことをイタリア人に言えば、間違いなく反感を買います.
イタリアは、レジスタンスが自分達の手でムッソリーニ政権を倒したのですが、ドイツに占領され、ドイツの支配下での戦争が続きました.
ですから、イタリア人に言わせれば、彼らは戦勝国なのです.
少なくとも、体制に対して何もしなかった日本人とは大違いで、日本人があなたのようなことを言えば、失笑を買うでしょう.
さて映画.
映画の初めの方で、キノコの形をした建物がでてきたはず.
原爆のきのこ雲を連想させるつもりだったらしく、原爆を、戦争を批判する映画のようです.