『下町』の後、ラピュタに頑張って筧正典監督の『新しい背広』を見る。
戦争で両親を亡くした小林桂樹が、弟久保明を育てながら、会社の同僚八千草薫と婚約するまでの話。久保の小学生時代の役で、弟久保賢(山内賢)が出ている。
互いに相手を思いやる兄弟愛の美しさを描く作品。
小林の会社は設計会社で、壁には平沼記念体育館提案企画のポスターが貼ってある。
八千草の母親は夏川静江というなかなか良い配役。
小林らは、岸輝子の家に下宿しているが、岸のケチぶりがおかしくて笑わせてくれる。岸の娘で、きんきん声の中学生が、しっかりした演技だなと思ったら、香山美子だった。やはり美人である。美人は若いときから美人である。
彼女は、後に松竹の大女優として有名になるが、この頃から子役として出ていたのだ。
久保明は、教育大(筑波大)駒場高校3年の設定で、なんと全校で2番なのだが、金がないので、東大進学を諦める。こんなことってあっただろうか。
監督の筧正典は、戦後最初に東宝で監督昇進された方の一人で、この世代は余りすごい作品を残さなかったが、今見ると後の森谷司郎らにつながるものを持っている。清潔な感じがとても良い。