あとは、『狂熱の季節』のみ

1961年に日本映画界に「六本木族映画」というジャンルが突如登場した。

大映の増村保造監督の『うるさい妹たち』、新東宝、公開時は同社が倒産したので、後継会社の大宝になっていた山際永三監督の『狂熱の季節』、そして今回の東宝の『六本木心中・愛して愛して』

この作品は、峰健二(峰岸隆之介)と中川ゆきの主演で、神経衰弱で大学を休学していた峰が六本木で、不良少女の中川ゆきと偶然会う。

翌日、二人は結婚することになり、その旨をゆきの母で、六本木で雇われマダムで秘密クラブをやっている淡路恵子に反対され、争ううちに淡路は窓から落ちて死んでしまう。

本当に突き飛ばしたのはゆきだったが、峰が警察に自首し、検事の高島忠男が取り調べ、妊娠しているゆきの性交の時期から、峰の申し立てが嘘だと分かる。

ゆきを暴行した愚連隊の一人に、児玉誉士夫邸に飛行機で突っ込んで自殺した日活の前野霜一郎がいたが、彼はこの時期から子役で出ていたのだ。

東京五輪を前に、地下鉄日比谷線を建設していて、スチームハンマーのピストン運動が性交のアナロジーで再三出てくるのはうんざりする。

最後、差し入れの昼食のみかんを食べたとき、峰は死んでしまい、ゆきも自殺し、六本木心中は完成する。

中途半端な感じだが、当時の東宝ではこの辺が限界だったのだろう。

原作は、笹沢佐保で、推理劇として見れば、「火曜サスペンス劇場」的である。

監督の岩内克己は、真面目で一応の水準の作品を作る人だったので、この後は加山雄三主演の「若大将シリーズ」を多作することになる。

この作品の製作が、市川久夫と山本嘉次郎になっているように、山本嘉次郎ら東宝の監督ら首脳の受けも良かったのだろう。

増村の『うるさい妹たち』の脚本の白坂依志夫によれば、「六本木族などは存在しなかった」そうだ。

因みに中川ゆきは、中川三郎の娘の一人で、中川弘子の妹であり、白坂依志夫の義妹になる。

あと、残る六本木映画は、山際永三の『狂熱の季節』だけになったが、これはフィルムが行方不明なのである。

大宝の配給映画は、大島渚の『飼育』以外は、所在不明の作品が大部分だったが、シネマトライアングルのご努力で大部分が発掘され、上映された。

だが、この『狂熱の季節』は、行方不明なのだそうだが、シネマトライアングル等の関係者のご努力で是非探してもらいたい。

もう1本、1954年の、今泉善珠監督の『燃える上海』は、東洋のマタ・ハリと言われ、戦後「漢奸」として処刑された川島芳子を川路竜子が演じる以外意味のない凡作だった。

阿佐ヶ谷ラピュタ

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コメント

  1. アパッチ より:

    狂熱の果て
    その大宝作品は「狂熱の季節」ではなくて、星輝美主演の「狂熱の果て」ですよ。

    私もこの作品は是非とも観たいですね。
    神戸在住ですが、もし作品が発見されて東京で上演されたら飛んで行きます♪

  2. ご指摘ありがとうございます
    『狂熱の季節』は、日本人のジャズへの誤解の集大成のような、笑ってしまう蔵原惟繕の日活作品でした。
    ただ、これにしろ、『黒い太陽』にしろ、黛敏郎の音楽は素晴らしかったと思います。
    彼は芸大生の頃、アルバイトのジャズバンドでピアノを弾いていたので、当然ですが。

    『狂熱の果て』には、原作者で女優の秋本まさみも出ており、これこそ本当の六本木族映画かもしれませんね。
    一体、どこにあるのでしょうか。

  3. uhgoand より:

    くい打ち機
    当時もいまもこの映画を見る機会はなかったが
    蛇足ながら一言
    男女のあのときの行為をピストン運動になぞらえて云うのであれば
    「スチームハンマー」は適切ではない
    「ウォータハンマー」とは水道管内の流速が急激に変化し衝撃圧から音が発生する現象で
    これが蒸気管で起きるのものを「スチームハンマー」と云いピストン運動はしない

    建設機械の基礎くい(コンクリート 鋼管 矢板 H形鋼など)打ち機の部分を指すのであれば「ディーゼルハンマー」で それは正しくピストン運動をする

  4. ビアンコ より:

    六本木心中・愛して愛して について
    はじめまして。

    紹介されている、東宝の『六本木心中・愛して愛して』につきまして、主演の峰岸 氏が日本大学藝術学部・演劇学科に在籍していた時の友人の方がこの映画に出演されているという話がありました。
    どなたであるかご存じでしょうか。